2018-5-31

どう防ぐ? SNSコミュニケーションのズレと勘違い

いま、コミュニケーションが複雑化している。
LINEをはじめ、InstagramやFacebookなどSNSの登場は、コミュニケーションのカタチを、日々変化させ続けている。
簡素なメッセージで要件を伝えることができたり、既読マークによって相手が確認したかどうかが把握できたり、スタンプで会話がスムーズに進む……。などその手軽さでプライベートのみならずビジネス上で利用する人も多い。
同時に、上司とのやりとりに悩んだり休日も頻繁にメッセージが来るなど、利用者の中にはストレスを感じる人も。

メッセージを送る側と受信側との“認識のズレ”が原因で、実際にトラブルになる例もあり、使用上のマナーについての見解が話題に挙がることも多くなってきた。
“認識のズレ”はなぜ起こるのか。ズレを回避するための使用上のマナーや、今後どんな点に意識してやりとりをするべきなのか。
社会学・ジェンダー論を専門とし大阪大学で教授を務める牟田 和恵さんにお話を伺った。

「♡」が招く誤解とズレ。
男女間、世代間でコミュニケーションの受け取り方は違う

LINEでの会話において、世代間、男女間で受け取り側の違いはあるのでしょうか?

一般的に絵文字やスタンプなどの使い方は男女間では大きく異なるといわれています。
例えば、女性は普段のやりとりの中で「♡」を頻繁に使う傾向があります。要件だけだとビジネスライクすぎる? という気持ちから「元気♡?」というように気軽に「♡」を使う。それが女性、特に若い世代にとっての標準モードですよね。
反対に、普段絵文字を使わない男性、特に年配の方からすると「♡」入りのメッセージにドッキリし、好意を持たれているのかと勘違いしてしまう。

誤解する側は男性、特に上の世代の人に限った話なんでしょうか?

全部が全部そうとは限りませんが、そもそも男女間ではコミュニケーションのモードがだいぶ違います。
男女の固定的なステレオタイプにとらわれるのは良くないですが、一般的な傾向として、女性はSNSに限らず、普段から相手を気遣って円滑なコミュニケーションをとろうとします。
対して男性は、他者とのやりとりの中で気を遣い合うということをあまりしない。男性より女性の方が気遣いのコミュニケーションが得意ですし、そもそも男性と女性とでは異文化。

そして異文化が交わると誤解が生じる。特にSNSで1対1のコミュニケーションになると情報の密度が知らない間に高まってしまい、やり取りをしているうちに相手との距離感について錯覚を起こしてしまうんだと思います。

「既読スルーは失礼じゃない」という常識が定着するべき

会社のメールだと節度を守れるけれど、SNSだと文章もカジュアルになってしまうという話もよく耳にします。

双方が同じようにそう思っているとは限らないですよね。
私も実際にある女性から、上司から「今日ゴルフなんだ」というLINEがきて返事に困るという相談を受けたことがあります。立場上、上司からのLINEを既読スルーするわけにはいかないから「頑張ってくださいね」と返す。

そうすると男性は会話が続いているのかと勘違いしてやりとりが延々続く。女性からすると、自分から話を切れないことがストレスになる。だったら無理して返信をしなくても、とも思いますが共通意識として「既読スルー」は失礼だと感じている人も多い。
人によっては、すれ違ったのに会釈もせずに無視される、と同感覚なのかもしれません。

問題を回避するためにも最低限のルールを決めた方がいいのでしょうか?

そうですね。大人数でのやりとりがスムーズに行えるグループトークや、議事録的な使い方などLINEは利便性が高いツール。
だからこそ、ビジネス上で利用する際はある程度線引を設けた方がいいかもしれません。

個別トークはしない、パーソナルな使い方はしないという基準を設けるとか。
SNSは基本プライベート、パーソナルで使うものという共通認識を持って、個人的なLINEをビジネスで活用しているということを意識しておくのが大切。そう考えると、SNSが登場して10年にも経たない今はちょうど過渡期なのかもしれません。

「プライベートな話をすると親しくなれる」という錯覚

そもそも、同じ会話をしていても人によって受け取り方も様々で、相手との関係性も影響してくるので微妙な問題です。SNSではどこからがセクハラの範疇なんでしょうか?

「こういう言葉はセクハラですか?」という質問自体がナンセンス。
前後の文脈や相手との関係性によって同じ会話をしても受け取り方は変わってきます。

なのでその一部を抜き取ってそれがセクハラに当たるかどうかは判断するべきじゃないんです。

男性側からは「セクハラと騒がれると何の話もできない」という声も聞きますが、職場では仕事と天気の話で充分では?「この前のプレゼン良かったよ」など、広く仕事の話をすれば何の問題もありません。
彼氏の有無など、プライベートに踏み込む会話をすれば親しくなれる、ということ自体が錯覚です。

要はコミュニケーションの質が求められている、と。

仕事の話を当たり前にすれば何の問題もないのにと思います。
特に男性、ある程度年齢がいった方は、仕事の仲間として女性と過ごしてきたという経験が無い方が多い。仕事のことで女性と対等にコミュニケーションする体験がないからビジネス上で知り合った相手に対して親しくなりたいと思うとプライベートに踏み込んでしまう。
女性として見るのではなく、1人の人間として向き合って会話をすることが大切になってくるのではないでしょうか。

パワハラ、セクハラを糾弾する女性に対して、同性側から「過敏に反応し過ぎだ」という声もあり、問題は一枚岩ではないなと感じます。

男社会で「ものわかりのいい女」と思われた方が得。
非常に残念な話ですが、多くの女性たちがこれまでそうしてきた現実があります。まさに今、これらの問題と向き合う過渡期にあると思います。

「たった一回の失言」という勘違い。
コミュニケーションのズレは文脈の中で生まれている

直接的な誘いでなくても、やりとりの中で相手に不快感を与える事例はありますよね。

仕事の飲み会の後、帰る方向が同じという理由で男性の上司と部下である女性がタクシーに同乗し、タクシーを降りた後に上司が「無事に家に着いた?」というLINEをおくったらセクハラだと受け取られたという事例も。

男性側からすると「心配したのにセクハラと受け取られて心外だ」と思うかもしれませんが、LINEのそのやりとりだけが問題な理由ではなく、その前の行動、文脈、相手との関係性が作用しているのでは。
たとえばタクシーの車内で「家に寄って良い?」みたいな誘いかけをしていたり、女性は本当は一緒にタクシーに乗りたくなかったのに同乗させられたなどの場合であれば、「無事に家に着いた?」というメールに、気持ち悪い、不愉快と女性が感じるのは理解できますよね。
そうでない、同僚として日ごろ良好な関係で接している相手なら、同じ文面でもセクハラだなんて思いません。
「自分の言動がセクハラだと受け取られるなんて心外だ」と思うとすれば、あなたがセクハラだと思わせるような関係性を日頃から作ってるのではないかとまずは自問してみましょう。

そして、LINEはもともとすごくパーソナルなコミュニケーションツール。深夜に家の電話にかけるのは失礼ですよね?
それと同じように、深い時間にLINEをすること自体が非常識という認識も持つべきでしょう。
SNSは即時的なコミュニケーションだからつい気軽にメッセージを送りがちですが、夜中に連絡すること自体が常識外れ。SNSにもTPOは存在します。

コミュニケーション新時代だからこそ、SNSのTPOを見直すべき

LINEでは気持ちをスタンプで代弁できることが人気の理由のひとつですが、仕事の間柄でスタンプを使う際に気をつけた方がいいことはありますか?

年配の男性からするとスタンプを使うことで「僕は偉ぶっていないし、若者の話がわかるんだよ」というアピールにもなる。
さらには叱責や注意した後に、そのフォローとしてスタンプを使うという使い方もありますよね。でも、このスタンプにはどういう思いが込められているのか、送り側と受取側だとずれが起きやすいのが問題。
部下を叱責をした後に、上司はフォローのつもりでスタンプを送ったとしても、部下にはそうは伝わらないこともありがちです。フォローなら、スタンプではなく言葉にして伝えるほうがずっと有効で誠実です。

それでは最後に、私達は今後、SNSとどう向き合い、利用していくべきだと思いますか?

これだけ多世代の人たちが、多様なシーンで使い始めているのですから、SNSのTPOについて、考えてみるべき時期に来ているのだと思います。
仕事上の人とLINEの交換をすることで、「この人はいつでも連絡してもOKなんだ」と錯覚する人も多いけれどそうじゃない。
あとはお互い、既読スルーをしても問題ないんだということが常識になればいいですね。日本はすごくお互いに気を遣い合う文化。誘われたらなんとなく断れない。そういう文化が土壌としてあって、そこにSNS という即時的なツールがでてきたので、コミュニケーションの問題がより複雑化しているなと思います。

大切なのは、自分の目線だけで考えずに相手の目線に立ってみること。短いやり取りでフランクにコミュニケーションできることがLINEの魅力。
だからフランクな関係でもない相手にずるずる使うのはご法度です。
でも、これからの話でいえば、LINEのカジュアルな特性を生かして、「やり取りはここで終わりで!」「それってセクハラですよ」など、これまで気を遣ってなかなか言えなかったことをユーモラスに表すスタンプができて活用されるといいですね。

  • 牟田和恵

    社会学者、ジェンダー研究者、大阪大学教授。専門は家族社会学とジェンダー論。個人的(パーソナル)なことから政治的(ポリティカル)なことまで、仕事や暮らし、DVなど女性が抱える悩みに向き合うwebサイト「WAN」にも参加している。
    その他、『ジェンダー家族を超えて―近現代の生/性の政治とフェミニズム」(新曜社)や『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)、『架橋するフェミニズム-歴史・性・暴力』(無料電子書籍)など著作も多数。現在、『部長、その恋愛はセクハラです!」の続編となる新刊を制作中。

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TEXT:児玉志穂PHOTO:是枝右恭

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