2018-4-27

子どもにどんなLINEを送るべき? 子育てプロにお母さんの悩みを聞く

「お母さんのメッセージが面白い!」「お母さんのLINEが変」というテーマが、度々ネットを賑わせている。
誤字脱字だらけで暗号のようなメッセージや、独特のセンスが感じられる会話、誤爆ネタなど、お母さんにまつわる話題は幅広い世代で人気だ。
新しいコミュニケーションツールの登場により、写真やスタンプ、メッセージ動画でのやりとりも増えてきた。
世の中のお母さんたちは、SNSを使った子どもとの交流について、どんなことを考えているのだろうか。
NHK教育『すくすく子育て』のキャスターや、NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事の活動を通し、親子の交流を見守り続けてきた天野ひかりさんに、母と子の新しいコミュニケーションの形を伺った。

「指示や禁止」はNG。親のかける言葉が、子どもの心を育てる

天野さんは高校1年生の娘さんを持つ母親でもありますが、お子様が成長するにつれて、コミュニケーションの仕方はどのように変化していきましたか?

子どもはだいたい2歳くらいから発語していきますよね。
2歳までの話さない期間に、どんな言葉をかけるのかが、心の発達にすごく大切なのです。 お母さんは教えることが自分の役目だと思っているので、「食べなさい」と指示したり、「あれはダメ」と禁止したり、一方的な言葉がけをしてしまうことがあります。

例えば、子どもが入浴の時間に別のことをしていると、親は「なぜいつまでもお風呂に入らないの?」とイライラしてしまいますよね。
でも、子どもはお風呂に入るよりずっと面白いことに夢中になっていて、別の角度から見ると、親が子どもの貴重な時間を邪魔している可能性もあるのです。

母親自身のスケジュールに合わない行動をすべて否定してしまうのは、一方的な押し付けであって、会話ではありませんよね。 世の中には、「指示」と「禁止」を言い続け、子どもが成長しても、それが親子の会話の土台になってしまっているケースが多いのです。

親自身が当たり前にされてきた教育が、今の時代にそぐわなくなっているという側面もあるのでしょうか。

そうなんです。昭和の教育は、「指示」と「禁止」が基本でしたが、その形はもう成熟しきっていて、次の世代へバトンを渡さなければいけません。そのときに必要なのは、「答えを教えること」ではないんです。

人工知能がこれだけ発展して、答えを見つけるのはAIのほうが得意になっています。
人間がAIに負けないために必要なのは「課題を見つける力」「問題を設定する力」なんです。
そのためには、自分の中にある問題を掘り起こすという作業が欠かせません。他愛のない会話の中から、本人も自覚していなかった不安や、漠然とした気持ち悪さが浮かび上がってくることがありますよね。

私は昭和の人間なので、会話に目的を設定してしまうのですが、実は「目的のない会話」の中にさまざまな視点を得るヒントがあるような気がしています。

娘はLINEで、130名の同級生がいるグループに入っているのですが、みんなのやりとりを見て、「へえ、そんなこと考えているんだ」「そこに問題があったんだ」ということに気づいて、面白がっているみたいです。LINEは、「目的のない会話」が生まれやすいツールなのかもしれません。

  

天野さんがLINEをはじめたのは、娘さんの高校入学のタイミングだったという

娘の体調が心配。悩んだ末に送った3文字のメッセージとは?

普段、お子さんとはLINEでどういうやりとりをしているのですか?

だいたいは「明日ぞうきんがいるんだって」とか、「今日は部活で遅くなるよ」というような他愛のないやりとりですけど。

私、夫と娘にかける言葉には、世界でいちばん気を配っているんです(笑)。娘が高校に上がってすぐ、「ちょっとおなかが痛いな」といって出かけて行った日があったんです。
私も心配になって、「体調どう?」というメッセージを打とうかなと思いました。
でも、体調のことを聞いてしまうと、本人はもう腹痛のことを忘れているのに、思い出させてしまうかもしれないですよね。 しばらく考えて、「どう?」っていう3文字だけ送ったんですよ。
お昼ごろに娘から、「数学結構丁寧でわかりやすかった」「面白かったよ」っていう返信がきました。

私は「痛くないよ」「治ったよ」と返ってくるかなと思っていたので、その答えは想定外。その後のメッセージで「2限目の生物も楽しかったよ」と教えてくれました。つまり、学校生活がめちゃくちゃ楽しいということを伝えてくれたわけです。
私が勝手に気にしていただけで、娘はもう腹痛のことなんて忘れて、違う世界に意識が飛んでいるわけですね。
その日は私も朝から落ち込んでいたのですが、娘のLINEにうれしくなって、午後からは高めのテンションで仕事することができました。

先ほど、子どもが遊びに夢中になっているときに「お風呂に入りなさい」と叱っても、心に響かないという話をしました。それと同じで、「体調どう?」を「どう?」と曖昧にしたことで、その瞬間子どもの意識が向いていることを邪魔せず、気持ちに寄り添うことができたと思います。メッセージを受け手の好きなように解釈できる「余白」があることも、LINEでのコミュニケーションの特徴だと思います。

娘こころさんとの入学したての頃のやりとり

聞きたいのに、聞けない……。お母さんのお悩みあるある

天野さんは、お母さんたちから相談を受けることが多いと思いますが、LINEでよくある悩みは何ですか?

子どもにたくさん聞きたいことがあるのに、「ウザがられる」ということが心配で、聞けなくなってしまうことですね。
私自身は、気になることはどんどん聞いたほうがいいと思います。
子どもが何かに夢中ですぐに返信できなくても、「お母さんが心配してくれている」ということはうれしく受け止めるはず。対面だと「うるさいなぁ」「今忙しい」と話してくれない場合でも、SNSは、時間的、空間的に距離があるので、子どもの余裕があるときに返信できるのがいいところだと思います。

天野さんは本日の取材にあたって、こころさんとJK言葉のやりとりをしていた

天野さんはママ友のグループにも所属していると思います。そこではどんなやりとりをしていますか?

ママ友のグループでは、それぞれが得意分野を活かして助け合っていますね。例えば、大雪警報が出た朝に、あるママはいち早く学校に電話して、休校かどうか確かめます。あるママは路線図を調べてダイヤの乱れを教えてくれます。そういう情報がLINEグループでサッと広がるので、頼りにしていますし、私も恩返ししたいなという気持ちになります。

ママ友のグループLINEでは休校等の情報の共有が行われる

スタンプは言葉のニュアンスを補い、「今の気分」を相手に伝える

メッセージ動画やスタンプなど、文字以外のコミュニケーションについてどう考えていますか?

私、大学生のときに「終助詞に見る相手の印象の変化」という論文を書いたのです。
例えば、「おいしい」の最後にどんな言葉をつけるのかで、受け手の印象が変わりますよね。 「おいしいわ」「おいしいね」「おいしいよ」という言葉の使い方で、ニュアンスが変わってきます。

スタンプも同じで、「わかりました」と打った後に、『イェイ!』というスタンプをつけると、テンションが上がっている状態だとわかるし、敬礼しているスタンプだとかしこまっている雰囲気を伝えられますね。
短文で要件を伝えることの多いLINEでは、相手にちゃんと気持ちが伝わるように、スタンプでニュアンスを補っているんじゃないかなと思います。

天野さん自身もスタンプや絵文字を使うように心がけるようにしているという

SNSのトラブルを避けるため、親子で守りたい三つのポイント


「子どもがSNSを使うこと」に対して不安を抱えている人も多いと思います。リスクについてはどうお考えですか?

私も以前は、既読スルーなど怖い情報ばかり入ってきて心配に思うこともありましたが、いざ始めてみると全然気にならなくて。でも、お母さんの中にはいじめなどが心配な方もいるかもしれません。私は三つのポイントさえ押さえていれば、「あなたがいいと思うことをやればいい」というスタンスです。

一つは、できれば10歳までに、「ママに相談したら絶対的に味方になってくれて、物事を一緒に解決してくれる」という信頼関係を築くこと。「ママには内緒」という関係だと、問題が表面化するまでに時間がかかって、事態が大きくなってしまうおそれがあります。

二つ目に大事なことは、善悪の意識です。「アップしたものは世界中の誰でも見られて、後から消すことができないんだよ」ということを子どもが理解した上で、きちんと責任を持つこと。

三つ目は、まだ自分でお金を稼いでいるわけではないので、課金に関しては、ちゃんと親と相談すること。これさえ守れば、後は何をやっても大丈夫かなと思います。

普段の会話やLINEの何気ないやりとりを通して、このポイントが守られているかどうかは確認できると思います。うちでは、10歳までにできるだけ多くのことを娘と一緒に体験して、話し合ってきたので、彼女の判断を信頼して、任せています。

  • 天野ひかり

    上智大学文学部卒業。テレビ愛知アナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとして活躍中。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで、子育ての重要性を認識。「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げる。子どものコミュニケーション力をのばす講座などを開き、今までの受講者は2万人以上。
    (※著書『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』より引用)
    天野ひかり
    http://www.amanohikari.com/
    NPO法人親子コミュニケーションラボ
    http://www.oyakom.com/

TEXT::三原 明日香PHOTO:福田 栄美子

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